7月23日
7:20 林道ゲート出発
今日の予定、というか目的は、第一ゴルジュ先の事故現場の検証。
事故当日はそれどころじゃなかったので、今日あらためて事故状況を検証したいのだ。
事故当日はそれどころじゃなかったので、今日あらためて事故状況を検証したいのだ。
ゲート前
その後はゆっくり釣でもしながら1年ぶりの沢登りを楽しむつもり。
8:30に三重泉橋到着。
ここまでは約1時間の林道歩きなのだが、1年のブランクはさすがに大きく、足取りも体も重いし、ちょっとした登りでも息が切れた。
10分ほど休憩を入れて、いよいよ三重泉沢に入渓する。
予想はしていたのだが、沢の歩きがなんとなく恐い。
滑るんじゃなかろうか?とか、この石動くんじゃなかろうか?とか、よけいな事を考えてしまい、恐る恐るギクシャクした歩みで遡行を開始する。
滑るんじゃなかろうか?とか、この石動くんじゃなかろうか?とか、よけいな事を考えてしまい、恐る恐るギクシャクした歩みで遡行を開始する。
それでも第一ゴルジュまでは30分ほどで到着した。
ゴルジュ入口の滝は、高さが2mもない小滝なのだが水量が多いと水線突破は難しい。しかし去年と同様、水量は少ないし、しかも滝壺が埋まって浅いので、胸まで浸かれば簡単に超えられた。
ゴルジュ入口の滝は、高さが2mもない小滝なのだが水量が多いと水線突破は難しい。しかし去年と同様、水量は少ないし、しかも滝壺が埋まって浅いので、胸まで浸かれば簡単に超えられた。
第一ゴルジュ
そして、記憶ではここから15mか20m先が事故現場なのだ。
が・・・慎重に探しながら歩いたのに、それらしい景色が見当たらない。
事故発生からヘリの到着まで3時間以上もの間、見続けた景色なので忘れるわけがないのだが、見つけられないのだ。
「15mか20m先・・」というのが俺の記憶違いなのかと思い、さらに進みながら探したが見つからない。
この写真の奥のほうが事故現場のはずなのだが・・・
そしてとうとう発見できないまま第二ゴルジュまで進んでしまったのだった。
おそらく、この一年の間に大きな出水があって沢の形が変わってしまったんだと思う。
そんなわけで、現場検証と言う第一の目的は永久にできない物となってしまったのだった。
ま、できない物は仕方がないので、気持ちを切り替えて沢登りを楽しむことにする。
さて、訳が分からんうちに到達してしまったこの第二ゴルジュ。
ちょっとした廊下の奥にCSの二段滝があるのだが、ハーケン打ちまくっての人工登攀になるので、俺的には素直に巻に入りたいのだが、同行のカッキー、直登する気まんまんらしい。
ちょっとした廊下の奥にCSの二段滝があるのだが、ハーケン打ちまくっての人工登攀になるので、俺的には素直に巻に入りたいのだが、同行のカッキー、直登する気まんまんらしい。
「やめようよ~」という俺の願いを聞き入れず、すでに滝の直下まで進みルーファンを開始している。
しかたがないので俺もそばまで進んで行き、「今日はリベンジでもあるし、1年ぶりの沢登りでリハビリ的な要素もあるのだから・・」などと説得してようやく思いとどまらせた。
ルーファン中のカッキー
で、いつも通り左岸から高巻を開始する。
しかし、この高巻、人工登攀の直登ほどではないが、けっこうめんどくさいのだ。
結構な高さまで登らされるし、トラバースもズルズルでイヤラシイのだ。しかもそのトラバースは結構長く続き、最後はきっちり30mの空中懸垂で沢に復帰するというのがいつものパターンなのだ。
結構な高さまで登らされるし、トラバースもズルズルでイヤラシイのだ。しかもそのトラバースは結構長く続き、最後はきっちり30mの空中懸垂で沢に復帰するというのがいつものパターンなのだ。
が・・・・
今回はもっとめんどくさくなってしまったのである。
適当なところからテキトーに登りはじめ、てきと~な高さでトラバースを開始する。
いつもはもっと上まで詰め上げて岩盤基部をトラバースした記憶があるのだが・・
「木の根っこが沢山あるからダイジョブダイジョブ~」と言いながらどんどんトラバっていくカッキー
適当なところからテキトーに登りはじめ、てきと~な高さでトラバースを開始する。
いつもはもっと上まで詰め上げて岩盤基部をトラバースした記憶があるのだが・・
「木の根っこが沢山あるからダイジョブダイジョブ~」と言いながらどんどんトラバっていくカッキー
んで、俺はと言うと、ズルズルのトラバースに怖気づいてしまい全然動けない。
これではらちが明かないので「アンザイレンしてスタカットで行こうよ~」と希望すると、カッキー、どうやらめんどくさくなってきたらしい・・・
これではらちが明かないので「アンザイレンしてスタカットで行こうよ~」と希望すると、カッキー、どうやらめんどくさくなってきたらしい・・・
「ここから斜め懸垂で強引に降りちゃおう!」という作戦に変更されてしまったのだった。
しかし高さはどう見ても50mはありそう。
「あそこでピッチ切れば良いんじゃね?」と言う感じで2ピッチの強引懸垂の開始。
持ってきたロープは8ミリ30mのザイル1本と5ミリ30mの細引き1本。
まあ、強度的に問題ないのは解かっているけど、幕装備を背負って5ミリの垂直懸垂はちょっと気持ち悪かった・・・
まあ、強度的に問題ないのは解かっているけど、幕装備を背負って5ミリの垂直懸垂はちょっと気持ち悪かった・・・
2ピッチ目の懸垂
さて、これで全部で四つあるゴルジュのうち二つを抜けた事になる。今の時間はまだ11時前。どう考えても余裕の時間なのでイワナなど釣りながらのんびり行く。
イワナ釣がどうだったかと言うと、「さすがゴルジュのど真ん中」とだけ言っておこう。
ただ、これを読んで行く気になった人!なめてかかると大怪我しますよ~。
なんたって大怪我した本人が言ってるんだから本当です!
なんたって大怪我した本人が言ってるんだから本当です!
楽しく1時間ほど遡行を続けると第三ゴルジュ到着。
ここは怖くはないがめんどくさいCS滝。
以前は簡単にフリーで登れた記憶があるのだが、なんだかめんどくさそう。
石の上にでっかい木の根っこが乗っかってるし。
ただ、その木の根っこから一本のツルが下がっている。
「あれ使ってゴボウで登れるんじゃね?」とカッキー
で、実際に登ってみると、「あれま!えらい簡単だわ」と言う感じでスルスル~っとクリア。なんだかボーナス貰った感じ 笑
以前は簡単にフリーで登れた記憶があるのだが、なんだかめんどくさそう。
石の上にでっかい木の根っこが乗っかってるし。
ただ、その木の根っこから一本のツルが下がっている。
「あれ使ってゴボウで登れるんじゃね?」とカッキー
で、実際に登ってみると、「あれま!えらい簡単だわ」と言う感じでスルスル~っとクリア。なんだかボーナス貰った感じ 笑
でも、このツルが無かったらマジでめんどくさい滝。
ほとんどの人が人工登攀で登ってるみたいだし。
だって左岸には残置されたシュリンゲつきのハーケンが連打されてたもの。
ちなみにその連打されたハーケンは登攀経験の無い釣り師とかじゃ難しくて使えないのであしからず。
ほとんどの人が人工登攀で登ってるみたいだし。
だって左岸には残置されたシュリンゲつきのハーケンが連打されてたもの。
ちなみにその連打されたハーケンは登攀経験の無い釣り師とかじゃ難しくて使えないのであしからず。
連打された残置ハーケン
無茶な釣り師が無理矢理ここまで来たとしても、おそらくここで退却だろうね。そしておそらく、凄い怖い思いをしながら往路を戻る事になるはず。
なにしろ俺が初めてこの沢に来た時も、相棒がどうしてもこの滝を登れなくて、ここで退却したのだから。
なにしろ俺が初めてこの沢に来た時も、相棒がどうしてもこの滝を登れなくて、ここで退却したのだから。
さて、これを過ぎると残るは最終関門の第四ゴルジュのみ。
しかし、第四ゴルジュは左岸から狭い岩屋みたいなところをすり抜けるように巻けば簡単に超えられるので、事実上、これで核心を抜けた事になる。
しかし、第四ゴルジュは左岸から狭い岩屋みたいなところをすり抜けるように巻けば簡単に超えられるので、事実上、これで核心を抜けた事になる。
はずだったのだが・・・・
本日の相棒が悪かった・・・
小一時間ほどで第四ゴルジュに到達したのだが、カッキー、またしても直登する気満々。
しかも「ビレー必要なし!」と言いながら俺を引っ張り上げるための細いフローティングロープを引きながらどんどん登って行ってしまったのだ。
しかも「ビレー必要なし!」と言いながら俺を引っ張り上げるための細いフローティングロープを引きながらどんどん登って行ってしまったのだ。
俺が見る限り、落ち口がえらく悪そう。
最後のスタンスは横に走るクラックが使えそうだけどホールドが何も無さそう。しかもツルツル。
少なくても俺は登れる気が全くしないのだ。
なのにカッキー、ビレー無しでどんどん登っていく。
で、核心の落ち口に差し掛かると、なにやら腰のあたりをごそごそやりだして、取出したのはカム。
それはつまり人工登攀で行くかビレーに切り替えるのかって事なのである。
で、核心の落ち口に差し掛かると、なにやら腰のあたりをごそごそやりだして、取出したのはカム。
それはつまり人工登攀で行くかビレーに切り替えるのかって事なのである。
ようするに簡単じゃないって事なのだ。
カッキー。ろくにルーファンしないで登ってたのだ。
カッキー。ろくにルーファンしないで登ってたのだ。
フリーで登るカッキー。ロープはまだザックにつながってる・・・
で、結局、あわててビレーの体制に入る。
カッキーはザックに取り付けてあったロープバッグからフローティングロープをハーネスに装着。
俺は手で持っていただけのロープをエイトカンに通してビレーループにセット。
これで一応ビレーの体制はとれたのだが、フローティングロープはダイニーマ。強度は充分だが全然伸びないロープなのだ。
なので、もしも墜落すると衝撃が吸収されず身体へのダメージが大きいのである。
カッキーはザックに取り付けてあったロープバッグからフローティングロープをハーネスに装着。
俺は手で持っていただけのロープをエイトカンに通してビレーループにセット。
これで一応ビレーの体制はとれたのだが、フローティングロープはダイニーマ。強度は充分だが全然伸びないロープなのだ。
なので、もしも墜落すると衝撃が吸収されず身体へのダメージが大きいのである。
ま、今回は高さが無いので問題ないけど、良い子は真似しないように。
結局、カムは決まらずハーケン一枚打って登攀を再開し大股びらきのムーブでオンサイト。
で、なし崩し的に俺がフォローで登る事になってしまったのである。
「まあ、落ちてもドボンですむし」という事で嫌々登攀開始
予想通り落ち口までは俺でも普通に登れた。
中間支点のハーケンまで登ると「勿体ないからハーケンちゃんと抜いてね。」とカッキー
このハーケンが嫌なほどバッチリ決まっていて抜くのにえらい苦労をさせられた。
中間支点のハーケンまで登ると「勿体ないからハーケンちゃんと抜いてね。」とカッキー
このハーケンが嫌なほどバッチリ決まっていて抜くのにえらい苦労をさせられた。
ずいぶん時間をかけてどうにか引っこ抜いてから核心部をルーファンする。
やはり俺には難しい・・・
しかも、よく見ると、すぐ上でビレーしているカッキー、ルベルソ使わないで肩がらみのボディービレーだ・・・・
「なめてる。こいつ、この滝をなめてる・・・」と思ったが、もはやどうにもならない。
しかし、横クラックはしっかりしてそうなので、とりあえず立ち込んで考えようと右方向へトラバース開始。
右足が水流の中のスタンスをとらえ左足を浮かせた瞬間!
右足が水流の中のスタンスをとらえ左足を浮かせた瞬間!
つる~んっと右足が水流に吹き飛ばされ落下開始~
直後に意外とやんわりテンションがかかって落下が止まった。ボディービレーが幸いして衝撃が緩和されたようだ。
でも、カッキーの肩は絶対痛かったはず。体重とザックと加速度が加わってるから軽く100キロ以上の衝撃だったはず。
崩れた体制を立て直すのにけっこう苦労したが、もうめんどくさいので残りは全体重をカッキーの肩にかけながらゴボウで登った。
ぜーはーぜーは―と息が切れていた。
この時の俺の気持ち、「墜落を止めてくれてありがとう。」という気持ちより「肩が痛かっただろザマミロ。」という気持ちの方が大きかった。笑
ハーケン抜いてる俺 このあと落ちます~
さてさて、これでこの沢のアトラクションはすべて終了。
残りは楽しい釣りとイワナのフルコース付のキャンプだけ。
残りは楽しい釣りとイワナのフルコース付のキャンプだけ。
釣竿を取り出しのんびり遡行を再開する。
今日の幕営予定地は滝ノ沢という枝沢の合流付近を予定しているので間もなくだ。
キャンプ地までに食材を確保しないとならないので2人して本気モードで釣りを開始する。
今日の幕営予定地は滝ノ沢という枝沢の合流付近を予定しているので間もなくだ。
キャンプ地までに食材を確保しないとならないので2人して本気モードで釣りを開始する。
俺もカッキーもイワナ釣りに関しては自他ともに認めるエキスパート。なのだが・・・
ぜんぜん釣れない。ゴルジュの中ではうようよいたイワナが嘘のように少なくなってしまったのだ。いない事は無いのだが少ないし小さい。
おそらくニグラ尾根越えでやってくる釣り師に荒らされちゃってるんだと思う。
この沢は難しいのは八丁クラガリと呼ばれる四つのゴルジュだけで、他の部分は体力さえあれば誰でも来ることができる沢なのだ。
おそらくニグラ尾根越えでやってくる釣り師に荒らされちゃってるんだと思う。
この沢は難しいのは八丁クラガリと呼ばれる四つのゴルジュだけで、他の部分は体力さえあれば誰でも来ることができる沢なのだ。
14:00 滝ノ沢出合
結局、天場までにキープできたイワナはたったの2匹だった。
それは非常にまずい状況だった。
共同装備の振り分けで、登攀装備担当はカッキーで食料担当は俺だったのだが、沢山釣れるはずのイワナを当て込んでいたので、調味料は沢山持ってきているが、肝心の食材は米とか蕎麦とかの主食系だけだったのだ。
それは非常にまずい状況だった。
共同装備の振り分けで、登攀装備担当はカッキーで食料担当は俺だったのだが、沢山釣れるはずのイワナを当て込んでいたので、調味料は沢山持ってきているが、肝心の食材は米とか蕎麦とかの主食系だけだったのだ。
これではお楽しみの宴会が台無しになってしまう。
しかたがないので天端にザックを放り投げて二人とも超本気モードで釣りを開始する。
カッキーはお得意のテンカラ。俺はと言うと、いつものルアーのほかに餌のミャク釣りの両刀使いだ。
実はドタキャンになってしまった安藤塾長に貸してあげようと思い、ゆうべ自宅でエサ釣り仕掛けを仕込んできたのだ。
で、2人して奮闘する事、約2時間、どうにかフルコースが造れる数のイワナをキープできた。
で、2人して奮闘する事、約2時間、どうにかフルコースが造れる数のイワナをキープできた。
16:00 天端設営
天場に戻りキャンプをこしらえる。
8ミリザイルの親綱をはりタープを張る。
タープは今は亡きケモの形見だ。いつもこれを取り出すとケモと過ごした沢の思い出がよみがえる。そしてちょっとセンチな気持ちになってしまう。
きっとカッキーもそうに違いない。
タープは今は亡きケモの形見だ。いつもこれを取り出すとケモと過ごした沢の思い出がよみがえる。そしてちょっとセンチな気持ちになってしまう。
きっとカッキーもそうに違いない。
天端設営はさすがベテラン二人。打ち合わせるわけでもないのに二人ともやるべき事を効率よくこなし、あっという間にキャンプが出来上がる。
薪を集め焚火を起こす。焚火の着火も一発で決まる。さすがだ。
キャンプ
ここからは食料担当の俺の仕事だ。
今夜はイワナのフルコース。
今夜はイワナのフルコース。
御品書きは
イワナのタタキ
イワナの天ぷら
イワナの塩焼き
イワナの骨酒
ビールはモルツを沢で冷やす
二杯目からは熊本焼酎の元老院だ。
イワナのタタキ
イワナの天ぷら
イワナの塩焼き
イワナの骨酒
ビールはモルツを沢で冷やす
二杯目からは熊本焼酎の元老院だ。
沢宴会としては、ほぼ完璧な料理となった。
こうして久しぶりの沢登りの夜は更けて行ったのだった。
最後に、
まずはリベンジ沢行に付き合ってくれたカッキーに感謝する。
遡行も宴会も釣りも非常に充実したものだった。
今後も沢登りは続けて行きたい。
今までのように、もっと厳しい沢へ、もっと難しい沢へ、という気持ちは正直に言うと揺らいできている。
しかし、これほど楽しい遊びは捨てる気になれない。
自分の実力と年齢と相談しながら楽しんで行こうと思う。
まずはリベンジ沢行に付き合ってくれたカッキーに感謝する。
遡行も宴会も釣りも非常に充実したものだった。
今後も沢登りは続けて行きたい。
今までのように、もっと厳しい沢へ、もっと難しい沢へ、という気持ちは正直に言うと揺らいできている。
しかし、これほど楽しい遊びは捨てる気になれない。
自分の実力と年齢と相談しながら楽しんで行こうと思う。